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日本の起源

 日本史が大好きな私にとっても、かなり難しい内容である。だが、内容以前に読んでいて感じるのは、歴史とは視点を変えれば解釈はいかようにもなるということだ。日本史を専門として研究している人々の間にも解釈の違いがあるということは、日中韓の間で共通の歴史教科書を作ろうというのが、いかにあほらしい提案かよく分かる。
 内容であるが、正直言って正しく理解しているとは言いがたい。恐らく自分勝手な解釈をしているはずなので、これは書評と言うより、この本から刺激を受けた自分の考えと言った方が正しいかもしれない。
 
 まず、日本の歴史において特徴的なのは、卑弥呼の時代からずっと多重権力構造であったということだ。つまり、どこか一つに権力が集中し、ピラミッド型を形成しているわけではなく、かといって明確な分担もなされていない状態がつづいていたらしい。天皇家が千年以上も血脈を絶やさず存在できたのは、天皇に絶大な権力が集中していたわけではないからだ。蘇我氏から始まり、藤原氏、上皇、平氏、そして武家社会と天皇の権力のそばには常に強大なもう一つの権力が存在していた。後醍醐天皇のように時として、政治の表舞台にたつこともあったが、殆どは時の権力者の権威付けとして働いていた。しかし、全く無力であったわけではなく、時の権力者達もその意向を無視することはできなかった。明治期に入っても、天皇中心の政治と表向きはなっていたが、元老院(この中でも複雑に権力者達がしのぎを削っていたのだ)や後には軍部が権力を持っていたとされる。
 この権力の多元性が、太平洋戦争という最悪の帰結を生んだ。統制派か、皇道派のどちらかが全権を掌握して、一つのプランで貫徹していれば、もう少しましな戦いになったかもしれない。一方の計画を、他方が運用したせいで、誰の責任で誰が何をやっているのかさっぱり分からない状況だったという。軍部内も、陸軍と海軍と二元的であり、かつ軍隊の編成は大臣が、作戦は参謀総長が行うなど、責任の所在がわからず、妥協に妥協を重ねる結果となってしまった。その結果、戦況は泥沼化して、戦死者の60%が餓死者だったという衝撃の事態となった訳だ。これに対して、「永遠の0」で有名な特攻隊の戦死者は0.2%に過ぎなかったと言うから、どれだけ悲惨な状況かが分かる。
 この責任の所在の曖昧さが、戦後処理の不透明感の一端をになっている気がする。つまり、ヒトラー率いるナチスとかムッソリーニといった、わかりやすい悪玉が存在して、それを征伐すればいいという、アメリカが好きそうな勧善懲悪のストーリーができなかったのではないだろうか?東京裁判などやってみたところで、結局、真実は藪の中で当事者本人も分からないという状況だったかもしれない。
 
 もう一つ興味深かったのが、近代日本版儒教の話である。こちらの方がさらによく分からなかったので、殆ど妄想に近い感想であるが、そもそも儒教においては、為政者が徳を積めばよく、民衆はアホで、道徳的な修養なんてしなくてもよかった。しかし、明治日本は西洋から輸入した国民皆教育とセットで儒教化を進めたので、国民みんなが徳を備えて美しい国を作る。という話になってしまったらしい。ここら辺から日本国民の道徳性が出てきたのかもしれない。もっとも、本書では荻生徂徠の弟子あたりも同じ事を言っていたというから、江戸時代にもすでに同じような発想があったらしいが。一方、本場中国や韓国では、民が修養を積む必要がなかった。そう考えると、街で平気でつばを吐いたり、大声で騒いだり、ホテルの備品を勝手に持って行ったりするのも、「何がいけない?」となるのも自然かもしれない。だが、現代の日本の民も別の意味で修養を積んでいるとは言いがたい。私も含めて、ネットや本でかじった情報や大手マスコミの情報を鵜呑みにして、民意という情報操作に踊らされている。かといって、多重権力構造で決められない政治家たちにも徳があるようにも思えない。まあ、権力が分散していても、徳を積んだ強いリーダーがいなくても、国民にもそれほどの徳がなくても、なんだかんだで平和でいられた日本というのは、結構奇跡的だと思う。残念ながら、この状態が永遠に続くとは思えないが。

 とにもかくにも、歴史を考えるというのはおもしろい。
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Author:Banana fish
村上春樹をこよなく愛する者です。タイトルは「風の歌を聴け」に出てくる台詞から引用しました。タイトル通りにありふれた現実と美しい映画や文学について書いていきます。

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